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最新事例研究


付加価値を生み出す人材の早期育成をめざす日産自動車の新入社員研修 日産人材開発センター

経営改革で劇的な再生を果たし、明確なビジョンのもとにさらなる成長をめざす日産自動車では、成長の原動力となる人材育成の面でもさまざまな改革に取り組んでいる。ここでは、2003年度よりリニューアルされた新入社員研修の内容について、企画・運営を担当する日産人材開発センター・マネジメントトレーニンググループのマネジャー、石川久吉氏とスタッフの安藤薫氏にお話を伺った。


e-ラーニングによる内定者研修を導入

日産自動車は、2003年度より新入社員研修を刷新した。さらなる成長をめざし、経営改革に取り組む日産では、改革を実現するための新たな人材採用を積極的に行っており、04年度は新卒、キャリアを合わせて約1000人(新卒は約半数)が入社している。刷新の目的について、石川氏は次のように語る。

「日産の全社員の中でも大きな割合を占めるこれらの新入社員を、1日も早く職場の戦力とすることが、育成の最重要事項となっています。そのため、従来新卒社員が一人前になるのに5年かかっていたとすれば、それを2年くらいに短縮したい。そして日産が掲げるビジョン・ミッションの実現のために、新たな付加価値を生み出していけるような人材になってもらうことを念頭に、研修内容を見直しました」

こうした考えのもと、新卒社員に対しては内定者研修と入社後10日間にわたって行う集合研修を見直した。

内定者研修は、入社後に必要となる知識をできるだけ早い段階で身につけてもらうために実施している。内容は、ビジネスマナー、ExcelなどのPCスキル、英語など、「最低限これだけは身につけてほしいスキル」(石川氏)を中心にe-ラーニングで提供。期間は10月から3月までの半年間で、内定者が希望するコンテンツを選んで受講する。受講を必須ではなく選択制にしているのは、内定者の自立への期待があるためだ。

「受講を必須にしても、やはり本人がやる気になって勉強しなければ身につきません。それでは会社としても無駄な投資になりますので、主体的にやりたいと思う人に受講させる形を取りました」(石川氏)

内定者は全国各地や海外にもいるため、従来は通信教育の案内を行っていたが、e-ラーニングにしたことで受講者が倍増し、03年度は延べ2000人が受講した。

受講者が大幅に増えた理由は、いつでもどこでも受講できるというe-ラーニングの使い勝手の良さもさることながら、研修に対する内定者のモチベーションを高める仕組みをつくったことも奏功したようだ。

「従来はなかなか受講者が集まらなかったので、e-ラーニング導入を機に、インターネット上に内定者とのコミュニケーションサイトを用意し、その中で、内定者研修の必要性を伝えたり、内定者の実力がどの程度かを自分で測定できるようにしました。こうした仕組みが内定者に『私も受けないといけない』と思わせることにつながったのかもしれません」(安藤氏)

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体を動かし頭を使う研修にシフト

入社後10日間にわたって行われる新卒社員研修は、前半5日間は「日産とはどういう会社か」がテーマ。最初の2日間は日産の求める人材像、日産のDNA、日産の将来、日産のブランドアイデンティティなどについて講義が行われ、日産の求めるマインドセットを理解してもらう。その後は社内の各部門の機能や課題などを解説する組織紹介、人事制度や社内生活の知識の説明、TOEIC試験などが行われる。残りの5日間は、ものづくりの現場を知るための工場見学(1日)、コミュニケーション能力向上研修(2日)、ビジネスシミュレーション研修(2日)で構成されている。

コミュニケーション能力向上研修は、20人程度のクラス編成で行われる。3分間スピーチや立ち居振る舞い、電話応対、仕事の進め方など、ビジネスマナーの必要性やコミュニケーションの重要性を、実際に体験しながら感じ、足りない部分を身につけてもらう研修である。

ビジネスシミュレーション研修は、ビジネスパーソンとして求められる基本的な仕事の進め方を、シミュレーションゲームを通じて体験し、その後ゲームを振り返りながらビジネスにおける自分の強み・弱みを感じてもらうというもの。ゲームはチーム対抗で行われ、お金をたくさん儲けたチームが勝ちという内容で、大いに盛り上がるという。

「研修のやり方としては、講義だけではなく、グループディスカッションやシミュレーションゲームのような体験学習を多く取り入れるようにしています。できるだけ体を動かし頭を使い、人とコミュニケーションを交わすことを通じて、早く会社生活に馴染んでもらうためです。また、付加価値を生み出す人材の育成という意味でも、グループディスカッションなどを通じて、自分の持っている価値観や考え方をより豊かにしてもらい、その上で、自分はどうすれば会社に貢献できるかということを考えてほしい。こういうことは1人で考えてもなかなか思いつかないので、ディスカッションなどを通じて他者の意見も取り入れながら考えを深めることによって、職場に配属された後の自立が早まるのではないかと考えています」(石川氏)

社員の自立を促す工夫も随所に取り入れた。

「例えば出席も事務局が確認するのではなく、新卒社員の中でこちらが指名したリーダーに確認させるようにしています。グループディスカッションもグループの中で役割を決めて行っています」(安藤氏)

新入社員研修全体像

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受講者の積極性と納得性を重視

従来の研修は大人数を集めた大教室での講義スタイルが中心だったが、やはり受講者は受け身になりがちで、自ら考える姿勢も生まれにくい。そこで、できるだけ少人数制を取り入れ、一人ひとりが研修に積極的に参加できる環境に改めた。例えば、講義に終始しがちな人事制度の研修も、前日に事前テストを提示して答えを考えさせるようにしている。テストは「従業員は遅刻・早退・私用外出をする場合、所属長の事後承諾を得ればよい」「賃金支払日の25日が休日の場合は、給与は翌日に支払われる」などの内容の正否を答えるもので、社員が最低限知っておくべき内容で構成されている。これらの正解を講義で説明することにより、受講者は同じ内容でも興味を持って講義を聴くことができる。

「このように積極的にならざるを得ない仕掛けを用意したので、新卒社員の自立性や積極性が自ずと出てくるようになっています」(安藤氏)

コミュニケーション能力向上研修とビジネスシミュレーション研修は見直しで新たに組み込まれた研修だ。従来、ビジネスマナーを教える研修はあったが、「単にマナーを教えるだけでは本人に対するメリットが伝わりません。コミュニケーションの1要素としてビジネスマナーを位置づけ、なぜビジネスマナーが必要かというところから説明し、本人に必要性を気づかせ、納得させることを重視した」石川氏。本人の納得性を重視するこうしたスタイルは、コミュニケーションを大切に考える日産の風土を反映したものといえるだろう。

一方、キャリア採用の新入社員に対しては、新卒社員研修の前半5日間の内容を4日間に短縮して実施している。キャリア採用は即戦力だが、やはり会社によって価値観や考え方、風土は異なるため、日産の価値観や風土をいかに理解し、そこに溶け込めるかがポイントとなる。そのため、日産のマインドセットに力点を置いて研修を行っている。

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効果測定と受講者のフォローが課題

新しい新入社員研修の効果について、石川氏「特定のスキルの定着を図るといった内容の研修ではないので、研修効果を測定するのは非常に難しく、現状はアンケート評価しかできていません。会社が求めるマインドセットを理解し、行動に結びついているかどうかを測定する方法を研究していくことが必要です」と述べている。受講者アンケートの結果では、5段階評価で講義型の研修が4.0であるのに対して、少人数制の研修は4.7と高い評価を示しており、従来の研修よりも社員の理解度が高まっているのは確かなようだ。

安藤氏は、「人数が多いので一人ひとりの個性や反応を踏まえてフォローすることが難しい点が課題です。今後はイントラネットなども活用しながら、個々の受講者とのコンタクトを増やし、それぞれの受講者が『会社にどう貢献していけばいいのか』ということを、より明確にして持ち帰ってもらえるような研修にできれば」と語る。

また、両氏は職場配属後のフォロー研修の必要性も指摘する。
「若手に対しては新入社員研修の後、部門横断的な研修がありません。ですので、1年後などにこの研修で学んだことをリマインドさせて再度定着させるような研修を持ちたいと考えています。そうすれば、他部門についての情報交換ができるメリットもあります。部門での研修は部門最適になりかねませんので、やはり全体として共有すべき価値観や考え方などは全員が集まった場で行っていきたいですね」(安藤氏)

この新入社員研修からもうかがえるように、「ビジネスにはコミュニケーションが必要である」と考えるカルロス・ゴーン社長のもと、日産ではコミュニケーションスキルの向上に全社的に取り組んでいる。現在、R&D部門を中心にパンネーションズ コンサルティング グループのビジネス英語とビジネスコミュニケーションの研修を採用。経営幹部を対象とした「グローバルネゴシエーション研修」から、若手社員を対象とした「コミュニケーション基礎研修」まで、あらゆる階層にわたり研修を展開している。こうした研修体系が、日産のさらなる成長に寄与することが期待されている。

--------------------------------------------------------------------------「人材教育」2004年10月号記事広告より

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